読書

大きなまるい月と、図書館に棲む蝶。

予告から(【手帖】本屋大賞「超発掘本」の衝撃 - 産経ニュース)少し気にしていた。二階堂奥歯「八本脚の蝶」(ポプラ社)の編集者である斉藤尚美さんからこの度の本屋大賞「超発掘本」選出を受けて新しい帯を巻かれた本を譲り受けた桑原聡さん(産経新聞文…

金子千佳「遅刻者」を読んでいて

この言葉の連なりが私の息を苦しくさせる。 すべて「あなた」と呼びかけるものを、一度真っ黒に塗りつぶしたあとの私は「抽象的な言葉」を禁じた。 そのようなものはお友達同士でやりなさいという嘲笑や、そもそもの「あなた」の位置に空いた多くの空隙が。 …

薄明から(引用)

人は薄明のうちに、謎とともに生まれる。もしも運命という石が見出されたとしたら、人はそれを限りなく透明になるまで、飽くことなく磨きつづけることだろう。ある人にとって、絵を描く行為は、このような薄明のなかから生まれるのだ。その種子は無心の巣の…

物たちからの問いかけ、到達しない愛(引用)

しかし、かれら物たちのすべてが、私の認識の枠のなかで、飼い馴らされ、おとなしくしているわけではない。 ある物たちは絶えず私に問いかける。 いや、私に謎をかけるのである。 私はかれらを鎮めるために、言葉を考えてやらねばならない。それがいまかれら…

「シュルレアリスム、あるいは痙攣する複数性」鈴木雅雄(平凡社) より引用

以下引用。 序 テクストとその外部 文学などどうでもよいと断言できる誰かのために、この書物は書かれた。既存の文学観に反旗を翻すのではなく、何らかのレベルで文学の無力を嘆くのでもなく、一つの単純な事実としてそう断言できる誰か、テクストは一旦書き…

「人々」エフトゥシェンコ

つまらぬ人間などこの世にいない 人間の運命は星の歴史に等しいもの 一つ一つの運命が、まったく非凡で独特で、 それに似ている星はないたとえだれかが目だたず生きて、 その目だたなさになじんでいても、 人々の中で、おもしろいひとだった おもしろくない…

言葉を放つこと──「マルセロ・イン・ザ・リアルワールド」フランシスコ・X・ストーク

(書かねばならないようなことを書くようにしないでいたいと思っていたら、記事を書くためにあけたウィンドウと二日間にらめっこすることになった。)「マルセロ・イン・ザ・リアルワールド」フランシスコ・X・ストーク作/千葉茂樹訳 (岩波書店STAMP BOOKS)読…