「人々」エフトゥシェンコ

つまらぬ人間などこの世にいない
人間の運命は星の歴史に等しいもの
一つ一つの運命が、まったく非凡で独特で、
それに似ている星はない

たとえだれかが目だたず生きて、
その目だたなさになじんでいても、
人々の中で、おもしろいひとだった
おもしろくないということそのもので

だれにでも自分ひとりの秘密の世界がある
その世界にはこよなくよい瞬間がある
その世界にはこよなく恐ろしい時がある
だが、それはみな、ぼくらには未知のまま

人が死んでゆくなら、
ともに死んでゆくその人の初雪、
はじめての口づけも、はじめてのたたかいも
何もかも人はたずさえていく

たしかに、あとに残る本や橋、
機械や画家のカンバス

たしかに、多くのものは残る運、
だが、何かがやはり消えてゆく
それが非情なたわむれの法則

死ぬのは人間というより、それぞれの世界、
人をぼくらは記憶にとめる、罪ぶかい地上の人を

だが,実際,ぼくらは何を知っていたのか、その人たちのことを?
何をぼくらは知っているのか、兄弟のこと,友のことを?

何を知っているのか、ただひとりの自分の女のことを?
血をわけた自分の父親のことを

ぼくらは何もかも知りながら、何も知らない

人は消える
そのひそかな世界はもどせない

だから、消えるたびにぼくはまた
返せないから泣きさけびたくなる



『人々』エフトゥシェンコ

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『星の歴史─殺人衝動』獣木野生伸たまき)で出会い、新居昭乃さんの『スプートニク』冒頭の朗読の詩の作者の名前を聴き、もしかしたらと思い色々調べてみたところ、同じロシアの詩人エフゲニー・エフトゥシェンコの詩の一部だとわかりました。


獣木野生さんの公式サイト
http://www.magiccity.ne.jp/~bigcat/index2.html
の以下より引用しました。

http://www.magiccity.ne.jp/~bigcat/WHAT/miss01.html